4月28日付の北國新聞に、春の褒章の記事がありました。
紫綬褒章・俳優 宮本信子さん
宮本信子さんの作品といえば、『マルサの女』 や 『ミンボーの女』、 『スーパーの女』 など、
私は 『女シリーズ』 がとても好きです。どれも素晴らしい作品だと思います。
そんな私。
昨日の新聞記事を見た時には、ふと宮本さんの他の主演映画が脳裏をよぎりました。
『タンポポ』
1985年の伊丹十三監督の作品。
閑古鳥が鳴くラーメン店の主人タンポポが、行列のできる店を目指して奮闘するストーリー。
この映画の中で、タンポポが繁盛店のスープの秘密を探るシーンがあります。
『あら!このスープ、いつもと違うわよ!』
ラーメンを食べながらこう言うタンポポに、店主は思わず…
『いつもと同じだよ!』
それでも食い下がるタンポポ。
『あらそうかしら。いつもに比べて※♪◎■△‱◇』
正確なセリフは忘れてしまいましたが、いつもに比べて味が落ちていると主張するタンポポ。
『そんなことないよ!いつもと同じ○○と○○を入れて、○○したよ!』
まんまとタンポポの誘導尋問に引っかかり、思わずスープの材料と作り方をバラしてしまう店主。
とても面白く秀逸なシーンだと思いませんか…?
業界は違いますが、私はこれと同じようなシーンを再現した人を知っています。
何を隠そう… いえいえ、別に隠す必要はありません。
私の師匠です。
鍼灸師である私の師匠は、北京のお師匠様のところで6年間修業した後、東京で開業していました。
開業後も、北京と東京を行き来しながら、お師匠様に教わっていたそうです。
そんな私の師匠は、いつも心にある思いがあったそうです。
それは…
『先生は、私にすべてを教えてくれているのだろうか…?』
ということだったそうです。
できる限り、お師匠様からたくさんのことを学びたい。
そう思った師匠は、一芝居打つことにしました。
『先生、私は東京で開業しています。先生に教わった通りにやっているのですが、
あまり効果が出ないのです。』
もちろん、大ぼらです。
もしそうなら、6年間修業した挙句に、しょっちゅう東京から戻ってきて教えを請うなんてことはしません。
『何!? そんなはずはない! 一体どんな治療してるんだ!?』
自分の教えてきた鍼の技法が効かない!? そんなわけがあるか! そんなことは絶対ない!!
私の沽券とプライドに関わる!!!
というわけで…
この後、有難くも誘導尋問に引っかかってくれたお師匠様は、詳しく治療法を説明してくれたそうです。
意志あるところに、道はある。
そういうことなのねー。
繁盛しているラーメン店を食べ歩いていたタンポポ。
ある日、とある店の店主と言い争いになりました。
『やかましい!素人にラーメンのことが分かってたまるか!』
大声で怒鳴る店主にタンポポは…
『でも、ラーメンを食べるのはその素人よ!』
そうなのです。
お客様は素人なのです。
そして、それでいいのです。
鍼灸師として開業している私も、肝に命じておかなければいけません。
肋骨が何本あって、鎖骨がどこにあるか?
三叉神経はどこを通って、ランゲルハンス島は体のどこで何をしてるのか?
そんなこと、お客様にはどうでもいいことなのです。
つらい腰痛が治ればそれでいいのですから。